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救急

【救急】救急資格のない消防士が今すぐ出来る救急現場活動【8選】

現役救急救命士の明日霧(アスキリ@asukiri)です。

公務員試験に合格し消防吏員になった皆様、
おめでとうございます!
これから各地方自治体の安全・安心のために頑張りましょう(^^)/

それでは本題に入っていきたいと思います。
※当記事は、救急資格を持っていない消防士向けに記載しているため、内容を一部端折って記載していますのでご留意願います。

各自治体の方針にもよりますが、
数か月以内に救急現場に出動すると思います。

なぜなら、全国的に火災より救急件数が多く
消防隊でも 「火災出動 PA連携&救急支援出動」 となりやすいからです。

その際に

  • 救急資格がないけど現場で何ができる?
  • 救急資機材って使っていいの?
  • 何をしたら良いかわからず立ちつくしてしまった

上記の様な不安や、
救急現場で実際困ったことはありませんか?

現在救急救命士として活動している明日霧(アスキリ)も、初めは救急資格が無く
救急現場に出動する前はとても不安でした。

実際に救急現場へ出動した時は
救急資格がないため、使用可能な資機材はほぼなく
また、上司達は情報収集や観察、状況報告に忙しく、中々指示をもらえませんでした。
そのため、ほぼ何も活動が出来ず、無力感を抱いたことを覚えています…

しかし そんなまだ救急資格を持っていない消防士にも、
救急現場で

有効 かつ 可能な活動 があります

当記事では、これらの不安を解決できるように

想定読者
  • 救急資格のない消防吏員

を対象に、現役救急救命士の 明日霧(アスキリ)が
実際の救急現場で、「これやってくれると助かるわ!!」と感じた
「救急資格のない消防士が今すぐ出来る救急現場活動8選」を解説します

結論から提示すると

  1. 活動スペースの確保
  2. 搬送経路の確保
  3. 初期評価(意識・呼吸・循環)
  4. 胸骨圧迫
  5. 止血&被覆
  6. 体位管理
  7. 資機材の搬送及び回収
  8. 傷病者の搬送

以上8つです。

PA連携とは

ポンプ車(Pumper)と救急車(Ambulance)が同時に出場するものであり、双方の頭文字から「PA」と名前をつけたもの

それぞれ詳しく解説していきます
※記載順は活動の流れの実施タイミング

それでは共に学びましょう!

①活動スペースの確保

難易度:1
優先度:3

救急隊は傷病者に接触し、観察をします。
その際、指令内容を基に必要な資機材を現場へ携行します。

これら資機材を置くスペースと救急隊3人が傷病者に接触できるスペースを確保してもらうことで
傷病者にスムーズな接触&観察ができます。

座位(座っている)の場合

傷病者を中心に半径1~2m、前方に+αのスペースを確保できると
観察から搬送準備までできるため、付近に物がある場合は他に移動します。

仰臥位or腹臥位(横たわっている)の場合

傷病者頭部側に1m程度、両脇に1~3mのスペースを確保できると
観察から搬送準備までできるため、付近に物がある場合は他に移動します。

②搬送経路の確保

難易度:2
優先度:2

救急隊は現場で必要な観察&処置をした後
搬送資機材を使用し、傷病者を救急車内に収容します。

救急現場は、屋外に限らず屋内(家の中等)に傷病者がいることが多々あります。
傷病者を救急車内に収容するには

傷病者が歩けない(or歩かせない方が良い)場合
搬送資機材を使用し、傷病者がほぼ横(仰臥位や半座位)になっている状態で
「頭側と足側」or「両脇と足側」にそれぞれ隊員が付く必要があるため

通常一人が歩く分には支障がない箇所も、搬送時には障害になるものが沢山あります。
そのため、搬送経路を確保してもらうことでスムーズな車内収容ができます。

具体的に搬送に障害となるものを例に出して
どのように活動するか解説します。

家具・家電

屋内の主たる障害物になり得るのが家具・家電です。

テーブルや椅子、棚等や扇風機・暖房器具等移動可能な物は移動します。
可能であれば家族に依頼or家族と協力して動かして下さい。

重量や移動先等の問題で移動が困難な場合は、
上部に置いてある割れ易い物を避けておくだけでも注意箇所を減らせます。

玄関スペースでは、当たり前のことですが靴を履きます。

搬送している隊員は、当然両手が塞がっており、
玄関スペースに靴が散乱していると上手く靴を履けません。

そのため、関係者や搬送しない隊員の靴は端に寄せ
搬送に付いた隊員がスムーズに靴を履ける様に靴を配置し向きを合わせます
※誰が搬送に付くか分からないことが多いため、
救急隊3名が搬送する想定で良いと思います

靴の置き方は、各救急隊で少しでも時間短縮を図るため試行錯誤していると思いますので
救急隊に聞いてみましょう。

意外に多いのが傷病者や関係者の車。

屋内(玄関等)から敷地外(隣接道路)までの間に車があると搬送の障害になります。
また、救急車の着車したい位置に車が停車していることも多々あります。

勝手に動かすことは当然出来ないので、所有者に移動を促してください。

ただし、関係者からは情報を聴取する必要もあるため優先順位を考慮する必要があります。

持ち主に必ず許可を取る

  • 全てのものが、傷病者 or 関係者の所有物であり財産です。
  • そのことを肝に銘じて無下に扱うことのないように実施します。

③初期評価

難易度:3
優先度:5

救急現場では緊急度・重症度を判断するため、初めに15秒程度で初期評価を実施します。

初期評価の結果次第で救急隊の活動方針が大きく変わるため、救急隊としては早めに欲しい情報です。

また救急資機材を必要としないため、資格がなくても問題ありません。

※病院内での急変対応等、既に各モニターが傷病者に装着されている場合は
各モニターの情報も初期評価に含まれるが、
本記事では救急隊のFirst Contactとして各モニターは初期評価に含めていません。

初期評価とは

生理学的所見(生体の機能:体の働き)に異常がないかを迅速に確認する。
この評価により処置や蘇生をただちに行う病態かどうかを見極めます。

【観察項目】
Airway(気道)・Breathing(呼吸)・Circulation(循環)・Disability(意識)を確認する。
頭文字をとってABCDアプローチと言われています。

初期評価の方法は
 >>救急現場の初期評価【基本手技】

以下内容は、救急現場の初期評価の記事内容から一部抜粋して記載しています。

A 気道: Airway

気道が開通しているかを確認します。

発語(会話)が可能であれば、気道は開通していると判断します。

発語不可やチョークサインをしている場合
気道閉塞(空気の通り道に異物がつまり呼吸ができない)が考えられるため
異物除去を実施する。
(救急資格がなくても出来ますが、やり方を正しくマスターしましょう。)

異物除去の方法は
 >>窒息解除(気道異物の除去)方法:腹部突き上げ・背部叩打・マギール鉗子

B 呼吸: Breathing

呼吸の有無、速さ、深さ、+αを
腹部や胸部を見たり、触れて確認します。

  • 呼吸はしている?  あり・なし
  • 呼吸の速さは?   早い・遅い
  • 呼吸の深さは?   浅い・深い
  • +α (呼吸の性状は?)

呼吸の確認方法は
 >>バイタルサイン測定:呼吸【基本手技】

C 循環: Circulation

循環の 有無、速さ、強さ、+αを
橈骨動脈を3本の指(示指:人差し指、中指、環指:薬指)で触れて確認します。

【橈骨動脈の位置】
橈骨動脈は手関節の橈側(母指(親指)に近い部分)を走行しています。

【橈骨動脈の触知方法】
傷病者の抹消側(指先側)で触れている指を少し圧迫すると触知しやすくなります。

同僚同士でお互い練習して確認してみましょう。

  • 脈拍(拍動)がある?  あり・なし
  • 脈拍(拍動)の速さは? 早い・遅い
  • 脈拍(拍動)の強さは? 強い・弱い
  • +α(ショック症状(冷汗、手足の冷感・湿潤、チアノーゼ)はないか?)

橈骨動脈で確認できなかった場合、総頚動脈で確認します。
総頚動脈でも触れない場合

CPA(心肺停止)と判断し胸骨圧迫を始めます

脈拍の確認方法は
 >>バイタルサイン測定:脈拍【基本手技】

D 意識: Disability

意識レベルの評価はJCS (ジャパンコーマスケール)で評価します。(桁数でOK)
下記表と照らし合わせて確認してください。

JCSとは

短時間で簡便に意識レベルを評価でき、
間脳・中脳・延髄への侵襲の目安として判定しやすいため、緊急時に用いられます。

JCS(ジャパンコーマスケール)

Ⅰ:覚醒している0:意識清明
1:見当識は保たれているが意識清明ではない
2:見当識障害がある
3:自分の名前・生年月日が言えない
Ⅱ:刺激すると覚醒する10:普通の呼びかけで開眼する
20:大声で呼びかけたり、強く揺すると開眼する
30:痛み刺激を加えつつ、呼びかけを続けると辛うじて開眼する
Ⅲ:刺激しても覚醒しない100:痛み刺激に対して、払いのける動作をする
200: 痛み刺激に対して、 少し手足を動かしたり顔をしかめる
300: 痛み刺激に対して、 全く反応しない
R:不穏 I:失禁 A:無言・無動 例)100-R等


※見当識:自分の置かれている状況や、周囲との関係を結びつけて考えることのできる機能
(時、場所または人物の認識等)

意識レベルの評価にはJCSの他にGCS(グラスゴーコーマスケール)という評価方法がありますが、JCSと比較してやや複雑です。救急資格がない消防士はまずJCSの大分類を覚え、慣れてきたら小分類を覚えましょう。
GCSについての詳細は別途記事作成を予定しています。

④胸骨圧迫

難易度:2
優先度:5

観察した結果、
傷病者がCPA(心肺停止)であった場合
CPR(人工呼吸&胸骨圧迫)とAEDパッドを装着します。

CPAの活動で使用する資機材は
救急資格者救急救命士のみ使用が可能な資機材がほとんどです。

救急隊が先着しCPRを実施していても胸骨圧迫は進んで交代してください。
なぜなら、CPAの場合人が足りません

実際の例

常に傷病者に付きっきり:2名(内1名は救急資格者)
 ・人工呼吸(必要があれば吸引)←通常救急隊の1名が実施
 ・胸骨圧迫  ←← 活動候補①

AEDパッド装着&車内収容準備(バックボード等の準備):1名 ←← 活動候補②

救急救命士2名 or 救急救命士 1名+救急資格者:2名
・関係者から状況聴取+IC(インフォームドコンセント)+特定行為指示要請&収容依頼
・特定行為を先行して準備
《救急救命士2名以上いる場合》
・特定行為(気道確保と静脈路確保)を同時並行で実施等

その他:1名以上
・指令担当に状況報告
・関係者誘導
・上記補助 等

※活動候補②については後述

胸骨圧迫の方法は別記事作成予定

⑤止血&被覆

難易度:2
優先度:4

出血している部位を確認し、
どのような出血をしているか?静脈性 or 動脈性

成人の全血液量は体重の約8%(60Kgの人で約5ℓ)あります。
全血液量の20%(60Kg の人で約1ℓ)が急速に失われると体に様々な変化を及ぼします。
そして、50~60%が失われると生命に危険が生じるため、止血は迅速かつ確実な止血を行うことが必要です。

動脈性出血の場合や静脈性出血だけど血が止まらない場合
直接圧迫止血法 or 止血点止血法で止血を試みます。
また静脈性出血や出血が止まっている場合は、創傷被覆を行います。

いずれも救急隊が現場到着後、再度創傷部位を確認するため
包帯でぐるぐる巻きにはせず実施するのが望ましい。

直接圧迫止血

出血している部位を滅菌ガーゼで覆い、その上から三角巾を当て直接圧迫する。

止血点止血

傷口より心臓に近い動脈(止血点)を手や指で圧迫して血液の流れを止めて止血する。

直接圧迫止血法が基本であり、
止血点圧迫止血法は、直接圧迫止血法をすぐに行えないときに応急的に行うものです。

創傷被覆

感染を予防するため滅菌ガーゼ等で創傷部位を覆うように被覆し
サージカルテープで貼ります。

⑥体位管理

難易度:2
優先度:4

体位管理とは、 傷病者の症状や創傷部の保護等に適した体位 (姿勢)を保つことによって、

  • 呼吸・循環機能を維持し、
  • 苦痛を和らげ、
  • 症状の悪化を防ぐ or 軽減すること

を目的とした手当です。

基本的には、傷病者は自分が一番楽な姿勢を取ろうとするため
傷病者の訴えを聴取し、最も楽な姿勢を聞き、
苦痛を与えない安定した体位を取れるように補助しましょう。

例として今回は以下3つを確認しておきましょう。

  • CPA       ⇒ 仰臥位
  • 意識無し&呼吸有 ⇒ 回復体位
  • 呼吸困難     ⇒ 座位

体位管理一覧 別記事作成予定

⑦資機材の搬送及び回収

難易度:1
優先度:3

救急現場には上記の様な資機材を携行します。

救急隊は指令内容から必要と思われる資機材をピックアップし持っていきますが
指令内容と内容が違ったり、現場の状況により使用資機材を変更することがあります。

また、PA連携の性質上、
救急隊が早急に傷病者に取りつく必要があるため、初期に必要な最小限の資機材を携行し
傷病者に接触することが考えられます。

さらに、現場で必要な観察&処置を行った後は
出来るだけ早く救急車内に収容し、病院へ向かう必要があります。

そのため、資機材の搬送や回収を手伝うことで、早期接触早期搬送開始が可能となります。

救急車内から資機材を持ってくることがあるため
各資機材がどこに積載しているか事前に確認しましょう。

救急資機材一覧 記事作成予定

⑧傷病者の搬送(足側)

難易度:2
優先度:2

傷病者の搬送には2人 or 3人で行います。
2人の場合 頭部側1名 と 足側1名
3人の場合 頭部側2名  足側1名

当然頭部側の方が重いため、先輩や上司の負担を減らすため
頭部側に付いた方が一見良さそうですが、
傷病者に対する処置の継続や傷病者の異変にいち早く対応するため
救急資格者が頭部側に付き、足側の搬送を補助することを推奨します。

まとめ

  1. 活動スペースの確保
  2. 搬送経路の確保
  3. 初期評価(意識・呼吸・循環)
  4. 胸骨圧迫
  5. 止血&被覆
  6. 体位管理
  7. 資機材の搬送及び回収
  8. 傷病者の搬送

以上、「救急資格のない消防士が今すぐ出来る救急現場活動【8選】」でした。

救急資格が無くても、救急現場で活躍出来ることはあります。
地味な活動が多いかもしれませんが、消防活動はチームワークです。

今回紹介した活動をしてもらえると、救急隊は助かりますし、強いては地域住民のためになります。

これからも、住民サービス向上のため
皆さんの活躍を願っています。

最後まで、読んで頂きありがとうございました。

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